週刊朝日/週刊図書館/「お茶」

こんにちは以下は「週刊朝日」2000年2月18日号に掲載。本誌所収「週刊図書館」の連載コラムとして、山田利行(ヒントブックス主宰)が執筆しました。(※本のデータ・価格等は掲載当時のままです)


[記事タイトル] 日常生活に欠かせぬ「お茶」の秘密 「栄光の商品」は世界史も動かした

「あなた、お茶になさいます?」

「お茶」は「お風呂」とも「お食事」とも言い換え可能だが、この不景気では御方様もさぞ不機嫌。「お茶」ぐらい自分でいれられるようにしていないと、この先、寝たきりになるや、尻をひねられるかも。煎茶・番茶・ほうじ茶の区別が分からないって? 『日本茶・紅茶・中国茶 おいしいお茶のカタログ』(南廣子監修、新星出版社・1500円)は、オールカラーでお茶の知識がぎっしり。お茶の歴史に始まって、いれ方・買い方、お茶請けまで解説されている。これで”お茶入門”はOKだ!

次に、お茶のプロたちの弁を聞いてみよう。『世界のお茶、ふだんのお茶』(ティータイム・ブックス編集部編、晶文社・1900円)では、紅茶・ハーブティー・中国茶・韓国茶、そして日本茶のエキスパートがお茶の楽しみを語っている。東京・吉祥寺の紅茶専門店「ティークリッパー」を営む佐藤忠臣さんが専門店の秘技を伝授。ハーブティーを飲むということは、「草花を通して太陽のエネルギーをからだのなかに取り込む」ことだそうな。ドイツ人薬剤師のこのアドバイスを、ドイツ在住の森恵さんが伝えている、というふうに。

ところで、イギリス人がお茶に初めて出会ったのは十七世紀末。そのお茶とは紅茶ではなく緑茶だった。緑茶はやがて紅茶に取って代わられるが、緑茶であっても、イギリス人は砂糖とミルクを入れて飲んだという。『茶の世界史』(角山栄著、中公新書・700円)によると、「茶にミルクを入れて飲む方法は、すでに蒙古あたりではふつうの飲み方」だったが、「茶に砂糖を入れる飲み方は、イギリス独特の飲み方」であった。そういえば、かき氷に宇治金時のミルクかけって、あるよね。日本人もこんな甘いの、食べるんだ。でも、お茶にはどうも……。

紅茶の消費増大とともに砂糖の消費も同じく急激な増加を示す。イギリス人は奴隷貿易によって砂糖を得た。「その栄光の商品は虐げられた奴隷の血と涙が結晶したものであったことは忘れられるべきではない」と迫られては、スティックの中身、さてどうしたものか?

インド茶誕生以前、イギリスは中国から紅茶を輸入していた。その引き換えに売り渡したのがアヘン。中国政府がその取り締まりを強化したことからアヘン戦争が勃発。奴隷貿易はやがて原綿をイギリスに供給。イギリス綿製品はインド綿業を滅ぼした。お茶は、世界の歴史を動かした。


上記でご紹介した本のうち、『茶の世界史』は特におすすめしたい。(2015.9.21記す)

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