いろいろ相談できて、ありがたい。

ショコラ(フランス在住)

私が日本を出たのが1989年ですから、もうずいぶん長い間日本以外のところで暮らしていることになります。最初はニューカレドニアという太平洋の小さな島で、その後セネガルのダカールにも住んでいました。

中国人とはどこに行っても出会います。ですからどこに行っても中華は食べられるし、中華料理の材料を使って日本料理もどきも作ることができます。海外で日本人に出会うことはそう多くないですが、会うとすぐに親しくなり、情報を交換するばかりでなく、本や古い新聞をあげたりもらったりすることもしばしばあります。でも、いつも好みの本が手に入るというわけではなく、むしろ読みたくもない本をしょうがないな、と思いながら読むことの方が多いですね。

毎日、日本語を聞いたり話したりしないので、日本語はどんどん悪くなります。漢字は忘れるし、気の利いた表現もぱっと思い浮かばなくなってしまいます。一番困るのは新語とカタカナ用語で、たまに新しい雑誌をもらうとさっぱりわからない。

こんな日本語不足と、どんどん悪くなる自分の日本語にプレッシャーを感じながら日本語教師の仕事を続けてきました。日本語を教えているのだからそんな悩みはないでしょう、毎日話すでしょう、と言う方もあるでしょうが、生徒は毎年入れ替わる「初級」がほとんど。半年ぐらい勉強しても私との会話は、「何を食べますか?」「どこへ行きますか?」で、中級以上になってやっと、「どこに行くんですか」「行くかもしれません」などが使えるようになる程度です。こちらも、相手の文章作成能力や語彙数の範囲内で気を遣いながら、なんとも変な日本語を使って話します。

日本語のほかに剣道も続けています。一番良いことは、自分の周りに集まってくるのは「日本人が好きな人」ばかりだということです。こちらに進出している日本企業では、フランス人と対抗して戦う日本人が多いので、行く場所によっては快く受け入れてもらえないこともあるのではないでしょうか。けれども私はずっと、日本や日本人に興味のある人や好感を持っている人が、頼まなくても近づいて来て、よろしくお願いしますと握手を求めてきます。自宅に招待すると日本料理を喜んで食べてくれます。日本に関する情報を持ってきてくれたり、別な日本人との橋渡しをしてくれたりもします。

そういった友達との間で、ちょっと”困った”コトも起こります。日本に興味のあるフランス人は、日本の歴史や政治・経済、今の日本人の生活や言葉・芸術・伝統文化・ファッションなどなど常に興味があるので、いろいろと質問されます。それにフランス人は理屈っぽい。剣道の友達には「武道研究家」と自称する人も多いので、武道の歴史や日本の歴史、武士道について、禅や装束、刀や剣について、教えなくても自分で勉強してよく知っていることが多いです。私に質問してくる段階ではかなり奥の深いものになっています。剣道だって、汗を流す前に理屈をこねるのですから困ります。私は、日本で過ごした21年間にボーっとしていて考えなかったことや、あたりまえ過ぎて疑問にも思わなかったこと、学校で習ったはずなのに復習していない事柄や、ちゃんと先生の話しを聞いていなかったらしい簡単なこと、日本にいたら生涯触れもしなかったであろう日本のあらゆる事実などなどを勉強しなおすこととなりました。

 さて、ヒントブックスさんとの出会いは、フランスに来て、結婚し、子どもが生まれた頃でした。夫の仕事の転換期でもありました。二人で、自宅にいて出来る仕事を探している頃、翻訳の学校で通信講座を受け、本格的に翻訳の会社を始めることになりました。その学校で発行している雑誌で知り合った翻訳家の友達が、ヒントブックスさんの存在を教えてくれました。

その頃、我が家のパソコンには日本語ワープロ機能がついていませんでした。ローマ字で「KONNICHIWA」などと書いて日本の人との交流がはじまりました。ヒントブックスとの連絡は郵便やファックスでした。そのうちヒントブックスから日本語ワープロ機能の使えるソフトを送ってもらったり、パソコン入門者用の本を送っていただいたり、パソコンの日本語キーボードを電器店に買いに行ってくださったり……。

こんなふうですから、ただの本屋でないことはすぐに分かりました。翻訳の仕事が始まり、辞書や資料が足りなかったので、まず実用的なものから注文しました。本屋で手にとって中身を見てから選ぶことができないし、今話題の本、使いやすい辞書などわかりません。ヒントブックスにお願いすると、「こんな本が欲しいんだけど…」というだけで、いろいろな本を見つけてもらえます。私は広告を見て、「読めばすぐ分かる」とか「魔法の辞書」とか聞くとすぐに信じてしまうので、「本当ですか?」と、まずヒントさんにメールを書くことにしています。相談できる先があるというのは本当にありがたいことです。

翻訳の仕事はすぐに軌道に乗らなかったので(今も、まあまあ)「急いで送ってください」と言ってすぐに届いたのに、すぐにお金を払えないこともしばしば……。待っていただくこともしょっちゅうです。

山田さんは、私からしばらく連絡が途絶えると、「どうしてますか」と国際電話やメールをくださいます。そんなときに限って、調子が悪かったりして本当にありがたい励ましとなります。(タイミングが良すぎるので、念力があるのかと思うほど)

フランスの日本人にもっと広めてやるぞと、ことあるごとにフランスで山田さんの噂話しているのです。いろんな事が軌道に乗るのは本当に時間がかかるもの、積み重ねと努力が必要なのだなあとつくづく思います。長い間人々に奉仕することを喜びに、常に新しいサービスと変わらない誠実さで続けていらっしゃる山田ご夫妻と子どもさんたちに心から感謝しています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。


ヒントブックスから、ひとこと

e-mail(電子メール)があれば、今は世界のどこにいても連絡をとりあえるので便利になりました。ショコラさんが、ふだんくださるメールは、こんなふうにあらたまってなくて、たいてい長い長いお便りです。どこからそんなエネルギーがあふれてくるのか? 仕事・家事・子育てを一心不乱にこなしている様子がいつもにじみでていて、思わずそんなにがんばらなくても……と思ってしまいます。

ショコラさんは、スペインとの国境近く、地中海にやや近い内陸部の町・グローイエに住んでいます。今ショコラさんのいちばんしたいことは、フランスと日本をむすぶ文化交流で、それを翻訳業として成り立たせたい、というのが夢だと思います。

ヒントブックスのレファレンス・サービスが、”本だけ”の相談に終わらず、お仕事や関心事にあわせて柔軟に、これからも工夫を重ねたいと思っています。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

2003.6.1

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