ヒントブックスの正体(ミステリー)

守屋光雄(大学名誉教授/神戸市)

「ヒントブックス」ときいて、何のお店かわかる人は少ないでしょう。「ブックス」から本に関係のある店かなと思う人はいても、店を探すのは大変です。明石駅から西へ歩いて15分、マンション4階、山田さん夫妻の「自宅の中」にお店があります。

やっと見つけて行ってみても、本が並んでいるわけではありません。原則的に会員制。会員から注文・相談を受けると大抵の本は短期間で希望の場所にメール便や宅急便で届けてくれます(代金後払い)。読みたいチャンネルの本も探してくれます。月刊の機関誌「さーがす」では山田さん夫妻自身が読んだり著者に会ったりして、感動・共鳴した本などの推薦・紹介などが載っています。

それに 本屋さんだから本ばかりを取り扱っている と考えると大間違い。無農薬商品の紹介、ケニア紅茶をはじめ内外のお茶類、ドイツをはじめ外国でつくられた木製の玩具、安くてうまいティルームやレストランの紹介、漢方医や専門医の推薦……何でも相談にのってくれます。

 このお店は1984年4月創業ですから2003年4月で20周年目を迎えます。私は妻と共に最初から会員としてヒントブックスをフル利用しています。

本はもちろん、上記のような取扱品も積極的に利用しています。ヒントブックスは私たちにとって必要な本を、どこの店よりも速く届けてくれる本屋さんとしてだけでなく、身近なコンサルタントとしての拠点でもあります。

ヒントブックスはこのようにして20周年を迎え、このきびしい世情の中でこれからも休むことなく前進することとその発展を心から祈ります。

上記のようなことは会員の方には既にご存じのことと思いますが、会員として、ヒントブックスの存在について多くの人たちに知っていただくために、この「さーがす」誌を通じて、世にもユニークなヒントブックスというお店(?)についてPRする義務もあると思い、あえて書きしるした次第です。

 ところで話は前後しますが、ここでヒントブックスに関する山田夫妻のエピソードを追記します。

ヒントブックスは1984年に創業ですが、私が山田利行さんと出会ったのはそれより13年も前でした。

神戸市須磨区の労金北須磨団地で、幼稚園と保育園の差別をなくすための「保育一元化」と、集団保育の中で子どもたちの心身の無限の発達を保障し創造性(遊びに徹した保育)を推進するために、「北須磨保育センター」という施設を私は創設しました。その年が1969年4月でした。

その頃、まだ大学在学中の一青年に出会いました。私と出会う前に、自己主張のメッセージともいえる原稿用紙十数枚に及ぶエッセイを郵送してきました。採用面接や大学生のテストなどでリポートを読んだことはしばしばありましたが、単なる履歴書でも、依頼書でも、近況報告でもない、自分のもつフィロソフィー(考え)を原稿用紙に、手書きのエッセイにしたためた文書を貰ったのははじめてでした。

その原稿は今手許に見つからないのですが、保育センターで「遊びの保育」をやっていると知り、保育センターの子どもたちとただただ遊びたいという積極的意欲がありました。子どもたちや親たちの自主的な集いで自然環境を守る活動などをしてきたが、その一環として保育センターで子どもと自由に遊べる機会が持てれば幸いだ、というようなことが縷々述べられていたのです。どんな青年かと関心をもって出会ったのが実は山田利行さんだったのです。

その後、彼は保育センターで保育者や子どもたちと共に園庭でドロンコになって遊んだり、竹とんぼなどのオモチャを作ったり、しばしば園外に出て山野をかけまわり、四季の草花に接し、創造的な遊びに夢中になってくれたりしました。

彼はその後、私の親しくしていた別の保育園でも遊びの保育に参加して成果をあげてくれていました。そして、その保育園につとめていた女性(輝子さん)と意気投合して結ばれ、神戸市須磨区で地域の子どもや親たちの自然観察や食育に関する集いをもったりして活動をしていました。これがやがて発展して、ヒントブックスをやるようになったのです。

私の人生観”「破」から「立」へ”(創造の論理)と、山田夫妻の既成概念を超克した、自然の摂理を重視してそれにさからうものを打破し新世界を創造する社会改革的哲学 とは、共通するものがあると信じています。


ヒントブックスから、ひとこと

守屋光雄先生は今年90歳。おつれあいのます子さんは85歳。2000年12月、結婚60周年記念の旅行中、心筋梗塞発作に襲われましたが九死に一生を得て、翌年2月に退院。以来、足は弱りましたが、頭と口は至って健康! とは、ご本人の弁。

著書は多数ありますが、近著は『いのちの旅路 平和・発達・福祉の心理学』(三学出版.1500円)。反戦・平和の運動ひとすじに歩み続けられました。

自然環境を議論する東京の集会で、幼児教育にかかわっている学者に相談したところ、神戸には北須磨保育センターという優れた園と守屋光雄という先生がいる、と紹介されました。意を決して、守屋先生に長い手紙を書きました(70年代初め)それからの長いおつきあいです。

守屋先生ご夫妻のご健勝を祈念致します。

2003.1.1

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