将来の夢をもつようになったダウン症生徒

  • 小笠毅/編 伊藤千枝/担当執筆
  • 『新版 就学時健診を考える 特別支援教育のいま』
    • 岩波ブックレット 991
    • 2019年1月発行
  • 以下の引用は、p57-58
    • 第3章_特別支援教育のいま > 教科学習か職業訓練か

 特別支援学校高等部3年生のみきさん(仮名)は、中学まで通常学級で学んでいました。ダウン症がありながらも、当時、関数や平方根といった数学を一生懸命学び、習得してきた彼女ですが、支援学校に入り、学習内容は、初歩的な時計や買い物の計算に後戻りしてしまいました。さらに、自立活動の一環として、職業訓練を意識した実習時間が増え、これまで学んできたものを活かす機会がほとんどなくなってしまいました。
 高校生になっても、みきさんは私たちの塾(※引用者註)に通い続けてくれましたが、一時、学びへの憧れが消えかかったこともありました。担当講師がみきさんの興味や関心を引き出しつつ、発展的な学びができるようにと試行錯誤を繰り返していると、あるとき、彼女から思いがけないことを打ち明けられました。「先生、私ね、お母さんと一緒にカフェを開きたいんだ」と。
 学校における実習体験や、さまざまな学びが積み重なり、とうとうみきさんは、将来の夢をもつようになったのです。いま、その夢を実現しようと、勉強にますます身が入っています。
 みきさんがここまで成長されたことをうれしく思う一方で、通常学級における学びが特別支援学校へと引き継がれなかったことが悔やまれます。どのような学びの場を選んだとしても、連続的な学びができるように、サポート体制を整えることが行政や学校に求められているのではないでしょうか。

※註:編著者が主宰する「遠山真学塾」

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