「心の理論」に学ぶ

「心の理論」を学ぶと、3歳までは表れないが4歳になると表れるという表現がある。注意深く読むと、4歳になって出現するということで、個人差を考慮しながらも、4歳になると出現頻度が目立つというように読み違える。しかし、保育室で、4歳児クラスではそこに到達しない子が少なからず含まれるということだ。
 福岡伸一の書で「人間の子供は七歳くらいまでに」と後段に引用しているが、他者の理解は7歳になっておよそ揃うということである。7歳は小学2年生に相当する。小学校に入学しても他人の心がわからない、自分の行いが友達に迷惑をかけるかもしれないことに理解が進まない子がこれも少なからず含まれるということだ。

山田利行 2020.10.18


 私が専門にする発達心理学は、人の心の発生と成長を考える学問と言える。しかし、名実ともにそう言えるようになったのは、「心の理論」研究が登場した1980年代以降のことであるかもしれない。──子安増生(2000年)『心の理論』p129

 続けて、こう記されている。──「心の理論」以前は、子どもの「行動」の発生と成長の研究が中心であった。しかし、「心の理論」以後は、子どもが人の心を理解する「心」をどのように発達させるかという問題にも焦点があてられるようになったのである。「心の理論」は、動物の「心」、人間の「心」、機械の「心」の三者をつなぐ重要なキーワードである。この三つの「心」を考えることによって、ミスティック(神秘的な)心の問題を科学の対象として論ずることが可能になったのである。──


 バロン=コーエンら著『マインドブラインドネス』(1995年。この書名は、自閉症の人びとの心の状態を表現したもの)で、「心を読むシステム」を、4つの機構として提唱した。(同書p28-33)

  • 意図検出器(動く物に感ずる心)
  • 視線方向検出器(見つめあう心)
  • 共有注意の機構(分かちあう心)
    ※次の3つは、生後10か月~14か月ころからできはじめる(同書p80)
    1. 視線の追従
    2. 宣言的指さし
    3. 物の提示
  • 心の理論の機構(心を読む心)
意図検出器(動く物に感ずる心)
動画|ルンバは10か月男児のお友達
video album 1分57秒 撮影 2016.11.6 制作 山田利行 ルンバ……ロボット掃除機(アイロボット社) 【見どころ】這い這いしている乳児(満10か月)が、その姿勢をさらに低くしてかがみます。乳児の関心事とからだのしなやかさが同調しています。 山田...
視線方向検出器(見つめあう心)
  • 参考書
    • 山口真美(2013年)『赤ちゃんは顔をよむ』角川ソフィア文庫
共有注意の機構(分かちあう心)

 あかちゃんがママに抱かれている。かわいいなあと思い、私も抱きたいと思って手を差し出すが、そう簡単にはこちらに来ない。イヤイヤとそっぽを向かれるだけだ。諦めて、ママと親しく話していると……あかちゃんは私をみつめてくる。私もチラチラとあかちゃんに目線を送る。なんだか距離が縮まったみたい。そして、再度、手を差し出してみる。体重を向け、いとも簡単に抱けるではないか。……そう思うも束の間、あかちゃんはママを求め、もどってしまう。
 あかちゃんはママの視線を共有し、ママの友達に安心するのだろうか。

──山田利行 2020.10.17

心の理論の機構(心を読む心)

──人間の子供は七歳くらいまでに「他人にも自分と同じ心がある。しかし他人はそこに自分とは違う考え方をもっている」ということが理解できるようになる。これが「心の理論」である。──福岡伸一(2009年)『動的平衡』p243


人間は、集団生活を行なうことによって身体的な弱さを補い、一人前になるまで他者からの援助を受けなければならない。集団生活を営むためには、他者の心の理解が必要であり、それが人間の適応能力の一つとして遺伝的に組み込まれていると考えられるのである。──子安増生(2000年)『心の理論』p118

山田利行 2020.10.17記す
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