乃南アサ 1960年生まれ 小説家
背表紙を眺める / 随筆
( 乃南は幼少時、両親と一緒に寝ていた。枕元に積み上げられていた両親の本の背表紙を眺めていた )
布団に入ってから眠りにつくまで、それらの本の背表紙を眺めるのが習慣になっていた。
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「眺める」ものだった本を初めて手にしたのは、小学四年生の時だった。
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その時に、母が初めて、緑色の文学全集の中から一冊を選んでくれたのだった。
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母が手渡してくれたのは『ジェーン・エア』だった。
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それが、私が「大人の本」を読んだ最初だったと思う。
- 出典 / 『日本の名随筆 別巻67』 作品社 1996年発行
- 作品収録元 / DO BOOK 1993年2月号

子どもの発達は、直線的ではなく、階段状に進む。ゆっくり徐々にではなく、ある日突然、きのうまで出来なかったことが、ふと出来るような気がして実現する。「こども」が「おとな」になるときも、きっとそうだ。この変化に追いつけないのは、むしろ「おとな」だろう。(2017.4.15...
山田利行 2017.4.15抄録