山を、なぜ歩くのか?

山を歩く

保育士養成校・神戸こども総合専門学院は山中にある。その利点を生かして授業では山を歩くことにしている。

  1. 景色としての自然(山)に留めず、自身の足をそこに踏み入れ、自分で確かめる。
  2. 用意された「道」ではなく、草をかきわけ、あるいは歩けそうな地形をみきわめて歩く。

下の写真は学校の「裏庭」。
学生たちの背景にある草原を踏み分け、その奥に見える森に入り込む。

野外にフィールドを求めてハイキングをする場合、地図に案内を求め、”歩行可能な道”を歩こうとするのが筋だろうが、敢えてそうしない。トゲの多い草木がないことを確かめた上で、あるいはそれを避けて歩く。森に入り込めば、それまでの歩きにくさは解消し、森の静寂を感じることになる。

学校の建物は視野から消えて見えないが、距離的には目の前だ。涼しい。静か。薄暗い。一人だと心細いだろうけれど、学友たちがいるから安心していられる。運動場と平行して森の中を100メートルほど歩き、再び草原にもどる。

学生たちはどこをどう進んでいるのかよくわからない。わからないまま私の指示にしたがって歩く。ややきつい傾斜を登ると明るい日射しを感じる。草原に足を踏み入れたら、トゲのある草木に注意し、あればそれを避けて歩いて運動場に出る。山に入り再び出てくるまで約20分。このわずかな体験が学校にいる空間を一気に広げてくれる。

この「小さな山歩き」を体験した次は「ちょっとした探険ごっこ」(上の写真)。近年、土がさわれない、虫がこわい・苦手、花粉症などアレルギー疾患をもつ学生が多いことなどから、無理してまでさせられないが、あらかじめ用意された「道」だけが歩く道ではない、自分で拓いていく「みち」もあることを体験してほしいために行っている。

学習用探検コースの距離は約300メートル。ガイド用にテープを張り渡しておく(上の写真では青いテープ)。平坦な歩きやすいみち → 尾根筋にとりつくための上り坂 → 尾根筋 → やや高く登りつめたところから → 一気に急坂を下る → 竹やぶが視野に入るあたりからさらに急坂 → 滑り降りるほどの急坂を通過して → ゴール(竹やぶ)

300メートルとわずかな距離だが、起伏や難所あり。これをおもしろいと思うか、恐怖に感じるかは学生それぞれ。こんな体験、今後おそらくしないだろう。一回きりでよいから体験させておきたい。竹やぶで小休憩したあと、再び前進すれば、管理された遊歩道(山道)に出る。ここでは近隣住宅地に住むハイカーにも出会う。道なき道を歩いてきた学生たちには解放感がわく。森林浴しながらの心地よいひととき。やがて舗装された車道に出会い10分ほどで学校の正面に辿り着く。

いつも学校から見えている景色について──「なるほど……。あそこをとおったら、ここに着くんだ」と大人としての納得で満たされる。そういう気づきがあれば、授業の目的は果たせている。

山と学生